脳梗塞の片麻痺による肩の痛みと武術の関節技

今回の記事は、脳梗塞後の麻痺側の肩の痛みに、
武術の関節技が役に立ったと言うお話です。

片麻痺で筋肉が強く緊張し、筋力低下している患者さんに関節技かけた??

と思われたかもしれませんが、確かにほぼ関節技です。

片麻痺の方がどういう状況か、またその関節技みたいな治療とは、
と言うことについて書いてまいります。

治療の経緯

患者さんは70代前半の女性。
8ヶ月前に脳梗塞を発症。
すぐに入院し、治療と院内でのリハビリを終え、8月に退院。

訪問の医療・介護サービスを受けておりました。

私が治療を担当することになったのが2ヶ月前の10月から。

片麻痺の患者さんによくある、
麻痺側の肩の痛みと強い肩こりに悩まされていました。

麻痺側の腕・脚は、自分の意思ではほとんど動かせないので
筋力は低下します。

もともと関節のはまり方が浅く、はずれやすい関節である肩は、
筋力低下の影響で
【亜脱臼】
と言う状態になりやすいと言われています。

亜脱臼とは完全な脱臼ではない、完全にはずれてはいないけど、
関節の位置がかなりずれていると言う状態です。

肩を痛めた人なら分かると思いますが、日中に動いても痛いし、
寝ている時にも腕の重さがかかって痛みで起きてしまうくらいなんですね。

私も若い頃に器械体操で傷めたのと、
格闘技の試合で傷めたのでよく分かります。

そして肩関節がかなりずれているわけですから、
動く範囲が狭くなっています。

特に上に上がらない。

私が治療している患者さんも肘は曲がったままで、
自分の額の高さ位までしか上がりませんでした。

鍼灸や手技療法を使い、ゆっくりとほぐしていきました。

体調も疲れやすくなっているので、
いきなり強めの治療で効果を焦ってはいけません。

10月からの治療で、ずいぶんとやれる治療も増えてきました。

そして、先日の11月20日に

「はじめてここまで(肩が)上がった!」

と患者さんに言って頂けたのです。

麻痺している手を健康な方の手で組んで頭上に上げると言うやり方です。
バンザイまではいきませんが、ほぼ上に上がっている状態です。

この時は仰向けで、この後座ってやってもらい、同様の結果でした。

その後も一度治療をしましたが、かなりよい状態を保っており、
痛みのあった肩はかなりリラックスして肩が下がっていました。

動きもよく、肩こりが軽くなっているとのこと。

 

片麻痺と肩の亜脱臼

肩関節が亜脱臼しているので、
まわりの筋肉はあらぬ方向に引っ張られ、
とても硬くなっています。

また関節がかなりずれているので、より脱臼の方向にいかない様に
細心の注意をはらって治療するのが基本となります。

夜間の痛みなどには、三角巾で肩を吊ったり、
肩や腕の下にタオルや枕を入れて、肩を安定させる処置をします。

 

武術の関節技

武術のアイデアは時として医学を超えると考えています。

医学の基礎理論はもちろん最大の基本とすべきですが、
理論を考えすぎて治療が不足していたり、
逆に行き過ぎることもあるのでは?と感じることがしばしばです。

今回私が行った肩への治療は、
患者さんの肩を脱臼させる方向に伸ばしてあげる、
と言う方法でした。

肩関節はもっとも可動範囲が広い関節ですから、
いろんな角度に動かしてあげなければなりません。

武術の関節技は、上下・左右・内外・ねじりと言った、
様々な方向へ一つの動作で引っ張ることができます。

武術ですから、どんな位置からでも、どんな方向にでも、
関節をはずして壊すことができます。

相当に複雑な方向に引っ張ったり、
ひねり上げたりする事を最小限の力でできるのです。

もっともはずしやすい角度で引っ張ると言うことは、
もっとも効果的に、しかも楽に関節を伸ばしてあげられると言う事です。

ここが現在の手技療法(整体、指圧、理学療法など)
を超えた人体のとらえ方が存在するであろうと言う理由です。

 

今回の治療法

患者さんに麻痺側を上に横向きに寝てもらい、
麻痺側の肩に関節技の形でゆっくりと引っぱる方法を3方向行いました。

ゆっくり行えばそうそうはずれるものではありません。

自ら関節技をかけられ、また相手にかける練習をしていたからこそ、
引っ張り具合でその限界と治療に最適な加減が分かります。

一般的な治療論ですと危ないからやってはいけないことが、
力加減と患者さんの治り具合をみて行うことで、
もっとも効果のある治療法となるのです。

 

まとめ

片麻痺の患者さんでも、四十肩・五十肩、
ブレイクダンスで傷めた肩、格闘技で傷めた肩、

全ての肩の症状に同じ治療法を使っています。

力加減や引っ張る方向などアレンジしながら行えば、
私としてはみんな一緒と思えて治療に迷わずに済み、
とても重宝しています。

今後も武術やダンスなどの『活きた医学』を自分自身で体感しながら、
さらによい治療ができる様に工夫していきたいと思います。

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